「猫のしっぽカエルの手」という言葉を、あなたは聞いたことがありますか?
初めて聞いたときと、「何かのことわざではないか」、と私は思いました。
「猫に小判」なんてことわざもありますから。
しかし、実際に調べると全く違うのです。
実はあるモノの名前を指していて、あなたも「へぇ、そうなんだ!」とつい思ってしまうはず。
今回は「猫のしっぽカエルの手」の意味について紹介します!
「猫のしっぽカエルの手」の意味を調べた!
「猫のしっぽカエルの手」で調べた結果、NHKの番組名のことだとわかりました。
ことわざのような言葉の組み合わせをしているため、聞いただけでは思い至りませんよね。
内容は、ハーブ研究家のベニシアさんの日常を追うドキュメンタリー。
京都の大原で暮らすベニシアさんの、平和で、手作りと工夫が凝らされた暮らしに癒された人も多いようですよ。
「猫のしっぽ」も「カエルの手」もある植物の名前だった!
そして本題、「猫のしっぽ」と「カエルの手」とは何のことか、ということです。
結論から言うと、どちらも植物の別名を指しています。
「猫のしっぽ」は「アカリファ・ヒスパニオラエ」という多年草の愛称!
「猫のしっぽ」というと、どんな植物を思い浮かべますか?
最初に思いつくのは「猫じゃらし」、正式にはエノコログサあたりでしょうか。
面白いことに、実はエノコログサは漢字で「狗尾草」と書き、「犬っころぐさ」が変化してできた名前だそうです。
イヌコログサと、エノコログサ、確かに似ています。
つまり、正式な呼び名ではないですが、「犬のしっぽ」とも呼べる草なのです。
しかし、エノコログサで遊ぶのは猫、というのは少し皮肉な話ですね。
さて、「猫のしっぽ」は似て非なるあの植物のことでした。
「猫のしっぽ」とは、「アカリファ・ヒスパニオラエ」の愛称。
多年草ですが、寒さに弱いため、春から夏の花と言えそうです。
エノコログサよりもフサフサした、赤い花穂をつけることが名前の由来。
触ると柔らかいらしく、まさに「猫のしっぽ」なのだそうです。
アカリファという正式名称よりも「キャットテール」という名前の方が、浸透しているのも頷けます。
アカリファの他にも、「猫のしっぽ」と呼べそうな草はいくつもありました。
花言葉は「気まま・上機嫌・愛撫・とまどい」。
きっと猫のしっぽの感情を示す動きと、触り心地から連想されているのでしょう。
「カエルの手」はあの身近な「カエデ」のこと!
カエルの手がどのような形をしているかが分かると、意外とあっさりわかるかもしれません。
そう、秋の彩りの代表格、「カエデ(楓)」です!
葉の形が「カエルの手」=蝦手(かえるて)に似ていることから「カエデ」と呼ばれるようになったそう。
その他にも「鶏冠木」で「かへ(え)で」と呼ばれていたこともあるそうです。
確かに、カエデの葉はニワトリのトサカ(鶏冠)にも似ていますね。
因みに植物学上では、カエデと「モミジ(紅葉)」は同じ植物に分類されます。
モミジは「紅葉する」を意味する古語「もみず」が語源です。
カエデと違って、形よりも色に重点が置かれています。
余談ですが、園芸や盆栽の世界では、カエデとモミジを区別するようです。
園芸では「切れ込みの深さと数の違い」の観点から区別します。
- 切れ込みが浅く、少ない:カエデ
- 切れ込みが深く、多い:モミジ
盆栽では「切れ込みの深さと葉の大きさの違い」の観点から区別します。
- 切れ込みが浅く、葉が大きい:カエデ
- 切れ込みが深く、葉が小さい、秋には真っ赤になる:モミジ
大きくてウチワに適してそうな葉はカエデ。
カナダの国旗に刻まれている葉もカエデに分類されます。
因みに、天狗が持っている葉もカエデに似ていますが、ヤツデ(八手)の葉です。
そして、秋の風物詩としてよく見かける、真っ赤でヒトデのように切り込みが深い形をした葉が、モミジと言えるでしょう。
園芸の世界では葉の形で、はっきりと区別しています。
一方、盆栽の世界では色にも触れていることから、芸術的な観点で区別しており、盆栽が見た目を大切にしていることがよく分かります。
カエデとモミジを区別するのは、日本人くらいのものです。
詩を詠むことが流行した平安時代の古語が語源である「モミジ」。
色や美しさ故に生まれた「モミジ」を、「カエデ」と区別して使うことは、日本人として大事なことかもしれませんね。
因みに、カエデの花言葉は「大切な思い出・美しい変化・遠慮」です。
季節によって見事に色が変わっていく様は「美しい変化」にぴったりと言えるでしょう。
「猫のしっぽカエルの手」は、ベニシアさんの願いだった!
NHKの公式サイトで、番組名に込められた想いが書かれていました。
「猫のしっぽ」も「カエルの手」も、名前の由来であり、キャッツテールやカエデの特徴への愛着から名付けられています。
どちらも植物の「愛称」のようなものであり、植物への愛情を示した証拠とも言えます。
植物を愛し、暮らしの中に取り入れ、植物とともに生きてきた昔の人々。
植物の名前には当時の人たちの親しみが込められています。
「植物とともに生きるならば、まずは親しみを込めて植物の名を呼んでほしい。」
というベニシアさんやスタッフの想いから「猫のしっぽカエルの手」という番組名になったそうです。
読んでいて、とてもやさしい気持ちになりました。
これまで「植物の正式名称を調べることで、言葉の意味が分かるはず」と思っていましたが、無粋でした。
私は植物名を名前というより識別番号のように思っていました。
しかし、ベニシアさんは植物との距離感が近く、自然と共同して生きているのです。
私たちはペットにその体の特徴を由来として、名前を付けることがあります。
植物の名前も同じで、全てが愛称と言っても過言ではありません。
動物の名前だって同じです。
「ネコ」という名前も「寝る子」という猫の特徴から付けられていると言われています。
名付けられたころはより愛称に近かったでしょう。
方言によって名前が異なることもありますが、ほとんど愛称です。
しかし、由来が知られなくなることで、名前も記号のように無機質に見えがちな時代です。
「猫のしっぽカエルの手」という言葉は、植物名に由来があることを私たちに思い出させてくれます。
「猫のしっぽ」はインド原産で、海外でも「キャッツテール」と呼ばれていました。
「カエデ」は日本原産で、名前そのものが愛称に近い形で残っています。
日本でも海外でも、植物を愛称で呼ぶ文化があるのです。
しかも「猫」も「カエル」も私たちには身近すぎる程、親しみのある動物の名前を使っています。
「猫のしっぽ」も「カエルの手」も、人類と植物の親しさを象徴したような由来なのです。
以上より、「猫のしっぽカエルの手」には、
「植物の名前は、親しみを込めて付けた愛称だから、親しみを込めて呼んでほしい」
という願いが込められていることが分かりました。
意味を付けるとしたら、「植物の名前は愛称である」でしょうか。
「猫のしっぽカエルの手」を観た感想は?
「猫のしっぽカエルの手」は2009年の4月から2013年まで放送されていました。
リクエストが多いためか、2016年から新作が放送され始めています。
現在も年に6回ほどのペースで新作が放送され、再放送もされています
私はこれまで見たことがないため、YouTubeにアップロードされた回を見てみました。
私が見た回は、2009年に放送された、第2回「朝市の仲間たち」です。
始終ほのぼのとしていますが、不思議と飽きずに最後まで見ることが出来ます。
緩やかなBGMに加え、ベニシアさんの声や言葉に癒されました。
ベニシアさんのマイペースさとゆったりした話し方は、典型的な優しいおばあさんそのものでした。
日本人が使う言葉よりも、外国人の話す日本語に、心地よさを感じるのは、私だけでしょうか。
番組内ではベニシアさんと周辺の人々との会話も映し出されます。
人々との繋がりも見え、とても生活感の溢れる番組です。
ハーブを使った洗剤作りも紹介されていました。
作り方も簡単で、ハーブさえあればすぐ作ることが出来そうです。
各回の内容やレシピはNHKのサイトでも確認できます。
私が見た回では、ベニシアさんが自分の家の庭木に果物を巻き付けるシーンから始まりました。
鳥たちが食べに来るそうで、どんな鳥がくるのか楽しみにしているのだとか。
おとぎ話に出てくる優しいおばあさんかと思うほどの穏やかさ。
また、農薬を使わない庭には、カエルや蛇なども寄ってくるそうです。
小さなカエルを手にのせて話す姿は愛らしささえ感じます。
無理のない、自然な会話。
テレビ番組であることを忘れそうな程、のどかな流れです。
番組の所々で、ベニシアさんの作ったエッセイが、英語で読まれます。
癖が少なく、聞き取りやすいため、初心者の英語のリスニング練習にもなるはず。
エッセイではベニシアさんの体験談が語られていました。
自然とともに生きるがゆえに生じるハプニングでした。
何気ない話でしたが、その日から、ベニシアさんは自然に優しい生活を心掛けようと思ったそうです。
「猫のしっぽカエルの手」という身近で可愛いタイトルだけあって、親近感のある番組でした。
ベニシアさんのように自然を大切にする暮らしをしたい、と見ていると思ってしまいます。
個人的には、忙しい日々に疲れた時にこそ見てほしい番組です。
ベニシアさんの生き方は確かに自然に優しく、勉強にもなります。
しかし、番組の和やかな雰囲気や、ベニシアさんたちが自然を慈しむ姿は、ゆったりと、気軽に見てほしいものだと感じました。
話の流れは緩やかで、ナレーションも落ち着いた声であるためか、寝る前に聞くと心地よい気分になれそうです。
ハーブが好きなら更にオススメします。
毎回、コーナーとしてレシピが出てくる上に、ちゃんと最後にレシピが再登場するのです。
日常の流れで手作りが始まるため、押し売り感もなく、心地よく聞いていられます。
おばあちゃんが台所でゆったりと作業するそのもので、ほっこりします。
ベニシアさんの語る日本語はシンプルなため、理解するのに苦労しません。
是非、優雅なひと時のBGMとして見てみてほしいです。
「猫のしっぽカエルの手」の意味を調べて
「猫のしっぽカエルの手」とは一体どんな意味なのか。
言葉の意味という「正解」を探すことにとらわれていました。
「猫のしっぽカエルの手」が番組名で、それぞれ植物の愛称でした。
加えて、なぜこのような名前になったのかも考えてみました。
「猫のしっぽカエルの手」の意味のまとめ
- 「猫のしっぽカエルの手」:NHK番組の一つ
- 「猫のしっぽ」:アカリファ・ヒスパニオラエの愛称
- 「カエルの手」:カエデ(楓)の名前の由来
- 「猫のしっぽカエルの手」の意味と願い
→どちらも植物名の由来が愛称であることを教えてくれる言葉
→「植物の名前は愛称だから、親しみを込めて呼んでほしい」という願いが込められている
それぞれの植物の愛称の背景を調べると、名付けた人の植物への親しみを感じます。
人間は親しみのあるものに愛称を付けます。
愛称を付けると、ただの植物でも不思議と可愛らしく見えるのです。
調べるうちに、植物への関心と愛着が湧きます。
どんどん突き詰めるうちに、名前の意味よりも、ベニシアさんが気になっていきました。
ベニシアさんは元貴族で、今の生活になるまでに苦労も多かったのだそうです。
本当に穏やかな暮らしができる人ほど、苦労した過去がある、とは本当なのかもしれませんね。
そうした過去を知ると、「猫のしっぽカエルの手」という名前は穏やかすぎるような気もします。
それでも、ベニシアさんの自然への親しみを表現するには、ちょうどいい名前だと思います。
もし、興味がありましたら、テレビやネットでも一部の話を見ることが出来ますので、是非、探してみてほしいです。